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東京高等裁判所 昭和25年(新う)1305号 判決

被告人

巣山長作

外一名

主文

原判決を破棄する。

被告人長作を懲役一年に、被告人勝幸を懲役六月に処する。

理由

弁護人福力田之助の控訴趣意書第一、二点について。

(イ)  原判決第二事実によれば、原審は「被告人長作は別表記載の通り、各当該年月日頃自宅に賭場を開帳し博徒を集合せしめ、当該博徒より各勝者毎に勝金額に対し一割または五分位の割合をもつて俗に寺銭または箱銭と称し三十円乃至千八百円位の金銭を收受し、以つて利を図つたものである旨」判示した上、これに対し刑法第百八十六條第二項を適用したのである。右判示事実によれば、被告人が賭場開帳の上、寺銭を徴集して利を図つた旨判示しているが、博徒結合によつて利を図つた点については具体的の判示をしていないと認められるのであるから、原判決が「博徒を結合し」と判示したことは、単に事情を記載したに過ぎず、あえて博徒結合罪を判示する趣旨でなかつたことが認められる。加之原審が擬律において、単に刑法第百八十六條第二項を掲げただけで刑法第五十四條第一項前段を適用しなかつたことは原審が前記の如く賭場開帳図利罪のみを認定した趣旨であることを裏書するものであるし、元来本件起訴状の記載によれば、罪名として賭場開帳図利罪とのみ記載されてあるのであるから、原審があえて博徒結合図利罪を認定しなかつたのは、もとより相当であつたといわなければならない。

(ロ)  しかして右の如き賭場開帳図利の罪につき法律を適用するに際しては、刑法第百八十六條第二項中賭場開帳罪にあたるか、博徒結合罪にあたるかを、特に明記しなくても判文と相まつて、その何れかに該当するかが分明である場合は単に刑法第百八十六條第二項と掲記するだけで充分である、然るに原判決の記載によれば前項の如く、賭博開帳罪を判示した趣旨が明瞭であるから、この点につき原判決に理由不備の違法があると主張する論旨はとるに足りない。又因に記録並に原審で取調べた各証拠によれば被告人開設の賭場に参集した賭客は、常習者が多かつたのであるから、原審が之を博徒という言葉で表現したのは当然である。何となれば刑法第百八十六條第二項に博徒とは賭博常習者を指称するものに外ならぬからである。之を要するに原審が判示第二事実について博徒結合罪を認定したことを前提とする論旨は、総て理由がない。即ち原判決には、右判示事実につき事実誤認乃至証拠によらないで事実を認定した違法乃至理由不備の違法はない。

(註 本件に量刑不当により破棄自判)

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